除染はすべてを解決しない 総合的な施策の枠組み必要/鬼頭秀一

TGFメンバーの鬼頭秀一教授の論評が、共同通信(2012年7月7日)から配信され、神奈川新聞(2012年7月15日)、中国新聞(2012年7月20日)に掲載されました。

除染はすべてを解決しない
総合的な施策の枠組み必要(2012年7月7日)

 

東京電力福島第1原発事故は、少なくとも東北・関東8県にも及ぶ広範囲な放射性物質汚染をもたらした。

この事態に対して、国は昨年8月、原発事故由来の放射線被ばくを住民が避難した地域では年間20mSv、それ以外の地域では年間1mSvまで下げることを目標に除染実施の方針を打ち出した。そして、今年1月から国の除染地域に指定された8県111市町村で除染が始まった。

年間被ばくが1~20mSv以下の地域では、現在も多くの人々が結果的に通常の居住を強いられている。子どもたちを重点的に、国際放射線防護委員会の勧告に基づく従来の国の基準である年間被ばく1mSv以下に可能な限り下げることは急務だ。

ただし、原発事故由来の放射線に対する防護策としては、除染のみならず、一時的避難、疎開、移住も含む総合的な政策が必要である。

現状は除染がすべてを解決するかのような形で動いている。より総合的な施策を実施する政策の枠組みがないまま「除染」だけが一人歩きすることは大変憂慮すべき状況と言えよう。

国が直轄事業として行う住民が避難した区域内の除染は、被ばく量を年間20mSvまで下げ、住民を帰還させることを前提としている。だが、そのモデル事業も、高い除染率が達成されているところでさえ、目標値にはほど遠い結果だ。また、年間数mSv以上の中濃度汚染地域において、除染の効果が限定的であることは数多く報告されている。

屋根のふき替え、コンクリートやアスファルトの張り替えなどの根本的な除染を行おうとすると、汚染された膨大な量のがれきが出る。共同通信の調査によると、「中間」貯蔵施設どころか、汚染土壌やがれきなどを一時的に保管する「仮置き場」さえ確保が困難な自治体が、関係市町村の約8割に上る状況だ。

そもそも、原発事故の「被害」にもかかわらず、汚染者負担原則に反し東京電力が費用を負担することなく、年間5mSv以下の汚染地域では国も除染費用を限定的にしか出さず、実施計画を各自治体に丸投げしている。これでは住民の理解が得られるはずもない。

中・高濃度汚染地域では、行政は、地域の復興の主体となるべき住民、特に子どもたちの流出を何よりも心配しているようである。この懸念自体は十分理解できるが、「除染」に過度な期待を抱かせてはならない。真のリスクコミュニケーション(危険認識共有)がなされず、科学的根拠もなく「高線量被ばくしても安全」と一方的に宣伝するような異常な事態まで散見される。長期的観点からは逆効果だ。

地域復興の主体となる子どもたちのためには、夏休みなどに非汚染地域へ集団で移し、年間総被ばく量を下げる試みを恒常化させた方がいい。一方で、伝統行事、祭りなどのときはできるだけふるさとへ戻し、愛着を醸成する事業も必要だ。コミュニティ単位での新しいタイプの「2地域居住」を検討、試行してはどうだろうか。

除染については、国が総合的施策の枠組みを確立し、住民の生活・行動パターンに合わせてポイントを絞り込み、効果的で意味がある除染を行う必要がある。